2000/10/23update

第3回公明党全国大会 重点政策(案)
21世紀「健康日本」の構築
――“活力と安心の生活大国”をめざして――


第1部

第五章 21世紀日本に「ごみ・ゼロ社会循環型社会」を築く
―いのち生命と地球を守る共生社会をめざして― 

1 21世紀の国のかたちとしての「循環型社会」


(1)なぜ今、循環型社会なのか

 私たち人類は、モノの豊かさを追い求め続け、「大量生産・大量消費・大量廃棄」という経済活動、いわゆる浪費型社会を続けてきました。
 この浪費型社会の文明が、このまま成り行きまかせに進めば、世界の森林や生き物は減り続け、石油を始めとした化石燃料が枯渇し、この地球上には、廃棄物や有害化学物質があふれてしまいます。それがもたらす影響は、ダイオキシンや環境ホルモン被害など、想像もしなかった化学物質の発生による公害や、酸性雨や砂漠化にみられるような環境破壊として、人類に襲いかかっており、さらに全地球的には、フロンによるオゾン層の破壊やCO2の排出による地球温暖化に伴う異常気象や生態系の崩壊が待ち受けています。
 地球温暖化防止を始め、人類の生存基盤であるこの地球環境を損なわず、維持し、回復させるには、世界中の国々が、この浪費型社会を見直し、資源を大切にしなければなりません。だからこそ今、すべてのシステムを循環型社会へと転換しなければならないのであり、それが人類を救う「21世紀の国のかたち」なのです。
 
(2)地球環境保全と持続可能な経済発展を両立させる「循環型社会」

 「循環型社会」を構築する上で、一番ネックになるのは、循環型社会が、経済発展のブレーキにならないかという懸念です。もし、そうであるならば、今後、わが国が循環型社会へ移行する上で、また、世界各国へ循環型社会を広める上で、大きな障害となります。
 しかし、実際は循環型社会へ移行すれば、新たな技術や産業が興り、新たな雇用が生まれ、経済は上向きになっていくのです。
 事実、平成12年版の環境白書においても、循環型社会に転換すれば、2010年時点で、エコビジネスの市場規模は約39兆円に拡大、環境ビジネスで約86万人の雇用拡大が見込まれると予測しています。さらに、本年9月にまとめた経済企画庁の試算によると、現在の浪費型の社会を続けると、2000年から2020年のGDP成長率は、年平均1.8%減少すると予想されるとしています。
 一方、循環型社会を構築すれば、製品の長寿命化、メンテナンス技術の開発やリユース、リサイクル技術開発の集中投資の拡大などで、2000年から2020年の間のGDP成長率は、年平均1.5%の上昇となり、持続的な経済発展に貢献すると予測しています。
 このように、循環型社会とは、地球環境保全と持続可能な経済発展が、車の両輪として互いに機能し合う21世紀の社会構造システムなのです。

(3)循環型社会を促進するための基本的考え方

 公明党のリーダーシップによって、「循環型社会形成推進基本法」が、建設資材リサイクル法や食品廃棄物再生資源化法、グリーン購入促進法を始めとする5つの個別法とともに、2000年の通常国会で制定されました。
 循環型社会を促進する上で重要なポイントは、第一に、この「循環型社会形成推進基本法」を厳格に運用することです。この法律で画期的な点は、生産者が自ら生産する製品について使用済みとなった後まで責任を負う「拡大生産者責任」と、廃棄物を出した者が最後まで責任を負う「排出者責任」が盛り込まれたことです。
 そして、循環型社会を構築する目標として、「いつまでに何をしなければならないか」という時間的スケジュールを明確にした点が他の基本法と異なる大きな特徴です。
 <1>2003年10月までに基本計画を作成 <2>2008年をめざし、「循環型社会のかたち」をつくる(2008年とは京都議定書で示された温室効果削減の目標達成へ向けて本格的にスタートする年)。これらは、いずれも公明党の強い主張によって盛り込まれました。
 第二には、廃棄物処理業を始めとする、いわゆる「静脈産業」の育成、不法投棄の一掃、最終処分場の確保へ向けての諸施策等に取り組むことです。循環型社会を促進するにはこれらの二点を同時並行で推進していくことです。

2 循環型社会構築への具体的な取り組み

(1)不法投棄対策と環境Gメンの設置

 瀬戸内海・豊島の不法投棄による環境破壊や、フィリピンに輸出投棄された医療廃棄物が大変な国際問題となるなど、現在も各地でごみの不法投棄が横行し、地元住民の生活に不安を与えています。いくら、循環型社会構築をめざしても、このような環境犯罪の取り締まりを強化しなければせっかくの努力が水の泡となります。
こうした山間部や海洋への不法投棄や環境汚染を防ぐため、公明党は三つの提案をします。

<1> 全国の不法投棄の実態調査
 全国の不法投棄の実態調査を早急に実施し、詳細な全国不法投棄マップを作成し、全国の不法投棄箇所と規模を明らかにします。そのためにも自治体や民間ボランティア(NPO、NGO)の協力による情報収集を進めるとともに、人工衛星からの撮影やヘリコプターからの赤外線探知等、最新の技術を活用します。

<2> 環境Gメンの発足
 不法投棄やダイオキシンを始めとした環境汚染を未然に防止するため、環境省に新たに監視専門官として「環境Gメン」を発足させ、地方に配置します。環境Gメンは、不法投棄や環境汚染の情報収集に努め、自治体や警察、海上保安庁、民間団体(NPO、NGO)と連携をとりながら、監視や取り締まりを強化し、立ち入り調査等を行います。また、自然保護員等を増員し、情報網を強化します。

<3>不法投棄の原状回復へのシステムの確立
 不法投棄の原状回復を早急に行うため、不法投棄者が明らかな場合には、原状回復を迅速に行わせるシステムをつくります。また、不法投棄者不明の費用については、排出者責任を徹底するため、関係者の協力を得ながら、廃棄物処理法の規定に基づく基金の拡充や、課徴金、保険制度など必要な整備を速やかに行います。

<4> 産廃業者の格付けと情報公開の推進
 産業廃棄物処理業者の実態調査を行い、全国の産廃業者のデータを集め、格付けを行うとともに、インターネット等を活用し、広く国民に情報を公開します。

<5> 最終処分場への公的支援
 現在、産業廃棄物に関する最終処分場の確保は住民の反対などで滞っているのが現状です。一方で、不法投棄を始めとする環境保全上の問題も深刻化しています。したがって、難しい問題であるだけに公的な関与はせざるを得ません。そこで産廃の最終処分場の確保については、国の責任を明確にして、環境調査や環境対策に万全を期するため助成金等を含む公的支援を行います。

(2)静脈産業(環境ビジネス)の育成・支援
 廃棄物の処理やリサイクルなどを行う産業を「静脈産業」と呼びます。この産業を支援すれば、新しい製品が開発され、新しいビジネスが起こり、雇用も拡大されます。それが結果として、「循環型社会」への改革を推し進めることになります。
公明党は、静脈産業を育成・支援するために、以下の諸施策を推進します。

<1> 環境ビジネスの振興
 環境保全やリサイクルのための技術開発を進める民間企業への資金補助や低利融資等の経済的優遇措置を講じます。また、エコビジネスへの起業家支援のために、新たな技術開発を進めるモデル事業の対象となった事業主に対し、資金を援助します。

<2> 企業への意識啓発
 企業向けの環境会計や環境報告書へのガイドラインを策定し、企業の環境に対する意識啓発をはかります。また、国民への情報開示をすすめ、製品の設計段階から有害物質の使用を抑え、リサイクルしやすい構造にするなどの工夫を促します。

<3> 静脈産業の経営基盤強化とポジティブキャンペーンの実施
 静脈産業の従事者の大部分が零細であることを踏まえ、事業者間の連携や統合による経営基盤強化や産・官・学の連携により、静脈技術開発を支援します。静脈産業について、廃棄物処理という極めて重要な分野に対し、国民がポジティブなイメージが持てるようなキャンペーンを実施します。

<4> 「グリーンコンシュマー(緑の消費者)運動」の支援
 フリーマーケット等の民間団体が自主的に行う営利を目的としない中古市場の活性化をはかるとともに、再生品や環境に優しい商品を好んで購入する「グリーンコンシュマー(緑の消費者)運動」を応援し、その普及をめざします。

<5> ITの活用
 処理業者間での情報確認、地域別の廃棄物の需給状況等にかかる情報のネットワーク化、地方公共団体による廃棄物収集や許認可にかかる情報管理、環境に配慮した製品やサービスに関する情報、インターネットによる廃棄物処理業者の情報公開など、ITの活用を積極的にはかります。

<6> 環境にやさしい新素材の研究開発
 従来のプラスチック素材などは、石油化学工学による化石燃料を用いたものであり、自然界ではなかなか分解しないことが問題です。環境にやさしい新しいエコマテリアルの研究開発を進めます。例えば、生分解性の多糖(人工でんぷん等)の合成技術など、食品・化粧品関係や、生体材料関係、あるいは糖鎖工学を活用した医療、医薬品の開発など、広い範囲での応用が期待されます。

(3)環境教育の充実と環境情報システムの確立

 地球環境を守るためには一人一人の生活スタイルを転換させることが大事です。そのためには、私たちの生活にあっても、ごみの分別を徹底したり、ムダな電気を消すといった省エネ生活に取り組まなければなりません。このように、私たち自身が環境を守る"エコ・ライフ"を推進するために、環境教育を徹底することが、循環型社会推進への大きな第一歩です。

<1>「エコライフのすすめ」の作成と実践
国民全員が環境へ負荷の少ないライフスタイルに転換するために排出抑制や省エネなど、環境にやさしい生活のモデルとなる指針「エコライフのすすめ」を作成し、国民の意識啓発と日常生活の場で実践できるように努めます。

<2> 教育現場における環境教育の推進
学校教育現場において、子どもたちが自然と親しむ機会を多くつくり、自然の仕組みや尊さを学ぶようにするとともに、「環境読本」や「自然読本」などによる学習を推進します。

<3> 自然と命の大切さを学ぶ場づくり
自然と命の大切さを学ぶ場として、国立公園等を活用し、五感で自然や緑の重要性を学ぶ様々なプログラムを市民に提供し、体験学習の拠点とします。

<4> 地球環境センターの設置
地球環境を保全するための技術研究や生態系を守るための調査研究と、さらには循環型社会を促進する技術研究などの人材を養成するために、地球環境戦略研究機関(IGES)に「地球環境センター」を設置します。

<5> 環境情報システムの確立
全国の地方自治体、NPO、NGOの情報などを一元化し、環境汚染や環境保全状況に関する全国環境マップを作成し、国民に分かりやすい視覚的な情報を提供する環境情報システムを確立します。さらに、関係団体同士の情報・意見交換を行う「知的ネットワーク」をつくります。

(4)自然エネルギー開発と利用の推進

 21世紀中に温室効果ガス問題を引き起こしている化石燃料から脱却するため、環境にやさしい代替エネルギーへの技術研究を進めるとともに、太陽光発電、バイオマス、風力などの自然エネルギーの割合を増大します。具体的には以下の自然エネルギーが大半の一般家庭でも利用できるように、研究開発を推進します。併せて、「自然エネルギー発電促進法」の制定を推進します。

<1> 太陽光発電の研究開発の推進
 地球上に降り注ぐ「太陽エネルギー」をクリーンエネルギーとして、直接電気エネルギーに換える太陽光発電の研究開発とそのコストの引き下げを推進します。また各家庭に温水器など簡単な太陽熱利用の機器を普及させるために国の助成措置を充実します。

<2> 風力・潮力・波力・海洋温度差等の研究開発の推進
 風力・潮力・波力・海洋温度差等を利用した発電の研究開発を推進します。特に風力発電については、落雷などによる発電停止への対策を強化するなど、安定した供給のための技術開発を推進します。

<3> バイオマスなどの新燃料開発の推進
 バイオマスは、アルコール分を多量に含んだ植物や農林水産業廃棄物、都市ごみからの大量のアルコールを取り出して、エネルギーとして活用するものであり、その研究開発をさらに促進し、一般家庭への普及をめざします。さらにエマルジョン燃料(水と油が乳化した燃料)の技術開発も推進します。

<4> 農作物を原料とした自動車燃料用エタノールの生産
耕作放棄の恐れのある中山間地域の棚田を活用して、自動車燃料用エタノールの原料となる菜の花などの農作物を生産します。エタノール燃料のハイブリッド車への利用でCO2の排出削減が期待できます。

<5> 雪氷エネルギーの活用
 わが国の降雪量は、年間700億トンから900億トンになりますが、この雪氷を無料のホワイトエネルギー(冷熱源)として、室内冷房や穀物の保存に役立てる研究開発をさらに推進します。

<6> 廃食用油の燃料化を推進
家庭から出る廃食用油を自動車等の燃料として再利用します。これにより、大気中へ排出されるCO2や硫黄酸化物を削減することができます。また、このエコ燃料を普及するため、給油サービスステーションを配備し、清掃車等の公用車への使用を促進します。

(5)環境技術とIT活用による世界貢献

 わが国には、これまでに培われた知恵と技術を活かし、「環境の世紀」の担い手として、国際社会のなかで大きな貢献をする使命があると考えます。日本のすぐれた公害防止技術を始めとする高効率技術が世界で活用されるよう取り組みを進めます。

<1> 環境技術者の派遣
 廃棄物・リサイクル技術、温暖化防止技術、公害防止技術、自然環境保全技術など、これまでのその成果や情報を、世界の各国へ向けて積極的に移転します。そのために民間研究員を積極的に派遣します。

<2> ITを活用した環境情報の世界発信
 省資源・省エネルギー、環境にやさしいライフスタイルやビジネススタイルを世界同時並行で実現するには、ITを活用して、地球環境に関する情報を提供していく必要があります。わが国が率先してこの研究を推進し、世界に貢献します。

<3> アジア・太平洋地域環境マップの作成
 アジア・太平洋地域と協力しながら、気候変動や砂漠化や酸性雨、淡水の減少などのモニタリングを行い、アジア・太平洋地域環境マップをつくり、内外に幅広く情報を提供するとともに、ODA等を有効に利用し、環境の保全に努めます。

(6)環境税の導入と経済措置

<1> 環境税の導入
 地球温暖化対策などの観点から化石燃料の炭素含有量と発生する熱量に応じて税を徴収するいわゆる環境税について早急に検討し、導入をめざします。その使途については、CO2等削減技術の普及促進や国民のライフスタイル変革の活動などへ充当することを含め検討します。

<2> 自動車関係諸税のグリーン化
 低公害車(電気自動車、天然ガス自動車、メタノール自動車、ハイブリット自動車)や新燃料基準達成車など、排出ガス性能や燃費性能が優れた自動車の自動車関係諸税を軽減し、一方、一定の基準に満たない自動車には重課する、自動車関係諸税のグリーン化をはかります。

<3> 省エネルギー住宅への優遇税制
省エネルギー型の建築物・住宅について、特別償却制度及び固定資産税・不動産取得税の課税標準の特例措置を設けます。

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