第6回茨城県IT戦略会議 議事要旨

 1.日時 : 平成13年8月3日(金)15:00〜17:00

 2.場所 : 県庁共用会議室

 3.議事:

(1)配布資料に沿い、情報通信基盤整備について事務局より説明。

(2)協議内容

(1) ITネットワーク社会づくり、情報格差是正等について

第6回茨城県IT戦略会議議長:私なりの解釈だが、今回事務局から示された、ITネットワーク社会づくりのイメージ図をみると、県庁等の行政機関に出入りする人たちにとっての業務の効率化が、図の左側になるのだろう。これはいわば、内部の効率化である。一方、右側に示されたのは、一生のうち、行政機関に1度も来なくて済む人まで含めて、間接的に恩恵に浴する人たちにとっての効率化ということである。そういう人たちのネットワークへのアクセスをどう確保するか、いわば外部の効率化という話で、いつでもどこでも利用できるようにするべきである。

委員:今回の資料は、よくできた案で面白い。しかし、こういうものをいかにうまく使うかが問題。行政情報は、一本調子であることが多く、強弱があまりないため、欲しい情報がどこにあるのかなかなか分かりづらい。ある程度のメリハリをつけるなど、定義の仕方のノウハウを考えると、情報を受け取る側も受け取りやすい。情報は、単に流すだけでなく、欲しい人に届くことが大事である。いずれにしろ、情報はインターネットで開放されるわけだから、双方向性を大事にするべきである。これから新システムを作るならそのようにしていくべき。その辺のつくり方をうまくやってほしい。

 また、防災情報や環境情報については、欲しいという人にダイレクトに情報がいくようにすると、生きた情報となる。民放テレビなどでは特にそうだが、情報は全部を見せるわけではなく、その提供の仕方にはある程度の方法論が必要である。そういうノウハウを活用するとよいだろう。また、原子力については茨城県は大変な思いをしてきているのだろうが、原子力防災情報ネットワークの図をみると、オフサイトセンター一箇所に情報が全て集中するという印象を受ける。何ヶ所かに分けて置くという形にした方が、幾通りかの安全確保をしているという印象を与えられる。

 保健・医療・福祉分野については、今、人々の関心が高いところであるが、得たい情報を得るには電話に頼ってしまうことが多い。ネットごしに、得たい情報についての回答がさっと得られるようになるといいと思う。例えば、おおよその金額を知りたいだけの場合、これこれこういう条件ならいくら、というように情報が得られるような介護保険の仕組みなどがほしい。インターネット上に金額一覧表が掲載されていても、全部読まないと分からないが、電話だと、せいぜい10分くらいで、まとまった結論を得ることができる。今のネット上での情報提供はそうなっていないので、そういう使い方ができるようになるといい。

委員:今回のテーマがこれまでと大きく違うのは、一般県民向けのコンテンツになっているところである。そうなると、ハードの普及との関連を考えないといけない。茨城県でのインターネットやパソコンの普及率がまだ低い現状にあって、どうやって情報を見てもらえるかを考えると、携帯端末に注目するべきである。今は、高校を卒業する子が1番欲しがるのは、iモードやEZウェブが利用できる携帯端末だという話がある。

 もう1つ、ブロードバンドを活かした動画配信はいいことである。防災情報についても、携帯端末を活かすべきである。

 1つ質問だが、資料1のp5「原子力防災情報ネットワークを活用した住民広報のイメージ」において、広報用サーバを「情報集約用サーバ」と「住民広報用サーバ」の2つに分けているのは、特別な意味があるのか?収集した情報をそのまま流せばいいのではないか?

事務局:災害時には、多くの情報が「情報集約用サーバ」にいっぺんに入ることになる。しかし、未確認情報や誤った情報など、整理されていないまま住民に示すと、例えば避難情報などについて、混乱を招くことになる。そのため、なるべく早く、ある程度整理したうえで「住民広報用サーバ」に入れることを考えている。これまでの経験を踏まえ、そのように予定している。

委員:確かに、確認されない情報が表に出ると混乱を招く可能性があるという点には納得できる。もう1つ質問だが、「住民広報用サーバ」からマスメディアを経由するのはどういうことか?これは、サーバに置かれた最終情報をメディアに流すということか?

事務局:そのとおり。

委員:こういうシステムができることに期待したい。

委員:今回の資料に携帯端末の話がないのはもったいない。あれを活かさない手はない。今回は、ネットワーク関係で4件、セキュリティ2件、その他1件、話をさせていただく。

 まず、ネットワーク関係についてだが、@ITS(高度道路情報システム)の需要なサブシステムVICS(路車間情報システム)の道路情報が先月から配信できるようになった。(参考:国土交通省ITSのホームページ地域とITSVICSのホームページ)この情報は5分毎に渋滞情報、交通規制、交通取締情報、駐車場情報、更に主要道路の平均旅行時間までを含んでおり、製造、流通、運送業者とって非常に有用なもの。しかし、それを見るためには、国は1事業者当たり360万円出せという。あれは非常に有用な情報なので、県警から直接iモード等に流して欲しい。持ってる情報を出さないのは問題である。是非、県がそのサービスをしてほしい。この情報のリリースを検討していただきたい。AITERの国内候補地は8月くらいに決定することになるが、その条件は、ITERを設置する場所の情報性と住みやすさであるらしい。本気で誘致するつもりなら、今月中盤までに、IT戦略会議として、国に対し、ITの現地情報をきちんとアピールする必要がある。そうでないと、他の候補地にもっていかれてしまう。B環境省が1平方キロメートル単位でセンサーを設置し、リアルタイムで環境情報を収集することを予定しているらしい。神奈川県は非常に意欲的なようだが、茨城県にも2番手になってほしい。是非とも、協調をとってやっていってもらいたい。C県内の現状をみると、やはりIT化はつらい、という印象がある。LGWAN、認証基盤などの共通基盤を広域的に統合する動きを具体化してほしい。

 次に、セキュリティ関連だが、@常時接続というのは、どこからでも侵入できるということ。ガードをきちんとかけないと、常時接続ができず、ブロードバンドが活かせない。24時間監視体制の方針をきちんと出してほしい。A今後、学校教育に情報関連の科目が入ってくるようだが、有害情報のフィルタリングについては、どこか1校で先生が有害情報をチェックすると、全学校で同じ情報についてガードがかかるようなシステムがあるらしく、それを導入してもらいたい。栃木県で既にやっていると思う。

 その他として、医療関連の情報は、県庁ホームページの目次から行けるようにしてもらいたい。また、県内にいくつかあるポータルサイトを1つにまとめてほしい。

 加えて質問だが、国からの2001年度の茨城県に対する地方交付税が茨城県の予算2250億円に対し2358億1600万円と、108億円強、多く交付されることが決定された。ここからIT戦略実施の財源を確保すべきである。今なら問題無く確保できるはずであるがいかがか。また、セキュリティポリシーがあれば教えて欲しい。また、環境省の日本列島環境自動制御システムの情報センサーについて、分かれば教えて欲しい。

事務局:常時接続に関するセキュリティについては、現在、一元的な窓口で管理することを考えている。

事務局:環境省との協調については、御意見を視野に入れて検討していきたい。

事務局:大気環境の測定システムについてなら、環境省がそうした試みを行っていることは承知している。今後、検討していきたいと思う。

委員:このシステムの本体はつくば市に置かれるそうなので、是非、茨城県にも手を挙げてもらいたい。

委員:今回のテーマは、住民の立場に立ったサービス業的な発想が必要な分野である。保健・医療・福祉面での課題として、「利用者の立場に立った、情報の提供」とあるが、これを具体的にどうやって実現していくのかを研究していってもらうと、より使いやすいものになると思う。また、自分が必要とする情報がタイムリーに提供される仕組みづくりが求められる。行政としては、情報をいかに提供するべきかが観点であろうが、住民からは、いかに「うれしい」情報が得られるかが重要であり、いわばネットワーク上のコンビニが出てくることが大きな変化につながるだろう。また、住民に情報を発信する能力があるほどネットが活性化するので、リテラシーの向上が大事である。まずはパソコンの使い方の習得から始まるのだろうが、ゆくゆくは、いかに情報を発信するかという意味でのリテラシー向上が求められる。

委員:県民が、今回の資料にあるような各種のシステムを本当に利用できる仕組みづくりが大事である。このようなシステムがあるということをまず知らしめることが必要である。iモードによる情報発信を行おうとしても、そもそも、そのような情報提供システムが存在するということを知らなければいけない。

 1つ質問だが、医療分野において、救急搬送患者のたらい回しが問題になったことがあったが、ネット上で、各病院の受け入れ態勢等の情報は流れているのか?

 もう1つ、私が嬉しいと思うメニューとしては、県議会の生中継をやってほしい。県行政の1つのPRになる。

事務局:昭和53年度に、対応策として情報コントロールセンターを作ったが、これは、消防署と医療機関に対する情報提供であり、一般県民に対しては、電話とFAXでの情報提供のみである。今後、システムの切り替え時にはネット対応にしていくことを考えているが、現状は残念ながらそういう状況である。

委員:ネット上で公開されている情報にたどりつくのが大変である。情報開示の仕方を考えてもらいたい。これからは、どんどん膨大な情報を発信する時代になる。また、IT社会には危ない側面もあり、ネットワーク社会にどう対応するかの倫理やモラルについて、学校教育でやってもらいたい。そこのところをしっかりやっていかないと、まずいことになる。

議長:その他、何かあればお願いしたい。

委員:デジタルデバイドについての議論が出なかった。地域間格差、年齢・身体障害などによる格差、情報リテラシーによる格差の3つがあるという話であった。対策として、情報キオスク端末の設置などの施策を行っているのだろうが、全体として、どのくらいの格差があるのか、統計としての数値情報をとっておく必要がある。ここのところは是非やっておいてもらいたい。そうしないと、IT化がどれだけ進み、どれだけ格差が解消したかが分からない。このような統計を正しく取るのは難しいだろうが、そこをきちんと整理してもらいたい。アクセス件数についても、トータル件数ではなく、地域別、年齢別、リテラシー別にとってみるとか。もっとも、リテラシーの高低をどうやって区別するかは分からないが。統計処理のうまい方法論を研究して、指針を出してほしい。

委員:ITネットワーク社会イメージ図について、「みんながITの恩恵を享受できてうれしいと感じる社会づくり」というのはいいキャッチフレーズである。しかし、このテーマでいくのであれば、今回示されたメニューだけでは嬉しいとは感じられない。例えば、施設の空き状況を示すだけではなく、その場で予約までできるようにしてほしい。また、出産したばかりの女性や高齢者など、あまり外に出られない人たちが必要とするものを自宅に届けるサービスとかも嬉しいメニューとなる。今の案のままでは中途半端である。

 この辺のことは、以前議題に挙がった、ITベンチャーをどう創出するかという議論と関わる話である。それには縦割りではだめであって、例えば委託とか、何からの形で民間にゆるやかに移行できれば、充実した「うれしい」と感じるホームページとなるのではないか。

議長:どうしても縦割りになりがちだが、例えば、「主婦の立場で欲しい情報」というカテゴリーが考えられる。このように「ヨコ割り」で考えていかないと有効性がないだろう。カテゴリーの編成作業が必要である。

 また、最近では、携帯端末に慣れすぎて、パソコンからインターネットにアクセスできると知って驚く人もいる。これからは、様々な機器を利用したアクセス形態が考えられるわけであり、それへの配慮も必要になる。是非御検討いただきたいと思う。

 また、アメリカの状況をみると、パソコンの普及率は頭打ちになってきている。30%の世帯は今後もパソコンを購入する予定がないと考えている、というデータもある。茨城県もきっと同じ状況であって、こうした格差に対し、従来のやり方と併用していくのは二度手間であり非効率である。この格差を緩和できるような情報提供のあり方を考えていく必要があるだろう。ITを利用しての内部の効率化を考えるには、今回の案でいいと思うが、外部の効率化を考えるには、未達成の部分をどう達成していくかを考えていかないと、このままでは危険である。

委員:どのようなコンテンツが、人を引き付けるキャッチャーコンテンツなのか、人々のニーズを調べ、検討していくような会合があるといい。アクセス件数が低ければ、なぜ見てもらえないのかを毎月見直していくといいものができる。ポータルサイトであれば、年間1億件くらいはアクセスがないといけない。そういうキャッチャーコンテンツをもっていないと、中にいい情報があっても誰もみない。私としては、その1つとして、前述の道路情報が欲しいわけである。

委員:今、県庁ホームページのログはとっているのか?アクセス件数が少なければ、デザインが悪いのか、ボタンが少ないのがいけないのか、等の原因を把握する有力な材料となる。ログ解析データがあれば、今後のホームページの提供の仕方について、強力な基礎データとなるだろう。

事務局:セキュリティについて担当している関係から、ワームの侵入経路などについてのログ解析は行っている。

事務局:JCOの事故情報、インターネット博覧会など、特に重要な情報については、単発的にログ解析を行っている。

委員:今話に出たログ解析は、是非やっていただきたい。いい統計情報になる。

委員:顧客セグメントという考え方がある。仮説を立ててログを解析し、その結果、情報提供の仕方を見直す、というサイクルができる。

(2) これまでの議論全般について

委員:7月末頃、県が大学院生と中小企業の卵を50名程度集めて説明会を行ったようだが、その様子はどのようなものだったか?

事務局:後日、資料をお送りさせていただきたい。

委員:IT戦略会議の検討課題をみると、必ずしも茨城県特有の問題ではなく、どこの都道府県でもこういうことが必要であろうと思われるものである。他の都道府県との連携について、報告書の全体を通して入れていただきたい。報告書の冒頭に記述するとか。こうした連携を土台に議論を総括していってはどうか。

議長:IT戦略会議と、国際海底ケーブル、ITER、サイエンスフロンティア21構想との関係についてはどのように考えるのか?

事務局:それは正に、車の両輪のようなものだということを実感している。地域IXという考え方は、そうした観点からのものである。産業振興の部分にもその辺の話を書いて、両者を関連付けていきたい。

議長:そうしてもらうと、委員の皆様方にも分かりやすくなる。議論が盛んに出た部分なので。

それと、富山県にある株式会社トヤマデータセンターという企業が、地域情報ナビimpulse(インパルス)というページの中で、茨城県についても情報提供を行っている。これなどは、これから我々が構築しようとしているシステムの先発部隊であり、競合相手として、その内容を分析してみてもいいかもしれない。

委員:IT戦略会議の報告書について、国が出している「e-JAPAN戦略」との関連性はどうなるか?全く無関係に、茨城県として独自のものを出すのか?

事務局:「e-JAPAN戦略」は、平成15年度を1つのエポックとしている。茨城県においても、特に認証基盤や住基ネットの流れと合わせながら、IT活用を進めていきたい。単に標準的なサービスだけではなく、茨城県としてのプラスアルファとしての「うれしさ」を出して、まとめていきたい。

委員:国の戦略では、平成15年までにやれ、と指示はするが、お金はくれないわけである。全国共通の基盤という考え方がなく、それではおかしいと、自治体側から国に言っていかないといけない。ITでふるさと創生というのはおかしい。ゴールが○○だから戦略は○○だというように、戦略にはゴールがないといけないのに、国の計画にはそれがない。

委員:私はどうしても、茨城県の産業振興ということで考えがちである。これまで、つくばの頭脳を活用するということが随分言われてきたが、結局、面白いものは出てきていない。しかし、国の研究機関が独立行政法人となり、これからは、民間のノウハウと提携していこうと考える研究者が増えてくるだろう。ITベンチャー創出のチャンスの時期である。これが、新産業創出の1つのきっかけになるといいと思う。