第5回茨城県IT戦略会議 議事要旨

1.日時 : 平成13年7月6日(金)10:30〜12:30

2.場所 : 茨城県開発公社ビル 大会議室

3.議事:

(1)配布資料に沿い、情報通信基盤整備について事務局より説明。

(2)協議内容

第5回茨城県IT戦略会議 委員:  基盤整備に関する今回の資料では、整備主体や整備手法が議論の中心だと思うので、その辺について私の考えを述べさせていただきたい。
 官民の役割分担ということになると、私としては、こういう事業の取りまとめは当然県になろうかと思っている。具体的にはどうするか、となると「整備方針(案)」で示されているような方針になるのだろう。
 @の光ファイバ調達については、光ファイバの調達そのものが目的となっているが、回線を県がどう整備するのかという意味合いで捉えると、ここで示されているダークファイバ借上げと自設の他に、通信事業者の装置を借りての回線そのものの調達が1番左側にくると思う。また、自設についても、いくつか方式があると思う。この資料での自設という言葉は「光ファイバを引く」という意味だと思うが、この右にさらに、「光ファイバを収容する管路まで自分で引く」ということが来ると思う。ここまでくると、通信設備は本当に自前ということになるが、それでは20億円では収まらないだろう。そうなると、a.装置を含めて回線を全て借りる、b.回線は借りるが装置は自分たちで引く(ダークファイバの借上げ)、c.光ファイバを自分たちで引く、の3つの区分けになると思う。私としては、3種類のミックス方式がよいと思う。恒久的に使うなら自設方式が最も経済的であろうし、保守のことなどを重視するなら、回線を借りるのが効率的であろう。また、民間事業者の提供時期が県の期待する時期と異なるので、どうしても県が自分で引くのだということになれば、ダークファイバ借上げがいいだろう。
 Aのアクセスポイントの整備方法については、通信事業者の施設を借用した方が効率的だと思う。電話回線でいえば、できるだけ多くのお客様を効率的に収容するために、電話局からスター型で張られているのが一般的である。例えば、もし県庁にアクセスポイントがおかれてしまうと、スター型の先にアクセスポイントが置かれることになり、トポロジーで言えば、スター型で登ってきて、またそこからスター型で下っていかねばならない。一方、NTT局舎にアクセスポイントをおくと、既にスター型のトポロジーができているので効率的である。
 Bのネットワーク形態については、私はループ型とスター型の併用がいいと思う。県全体を対象とした整備を考えると、どうしてもループ型だけというわけにはいかない。どうしてもスター型の部分がでてくる。重要なのは、資料の基盤整備イメージ図における黄色の幹線について、その信頼性をどこまで持たせるかである。県や市町村、各産業が利用する重要なネットワークとなると、その信頼性を高めておかないといけない。例えば、県庁の電話回線は分散収容しており、幹線ケーブルはループ状で、事故などで故障したときは、自動的に回線ルートを切り替えてサービス提供を確保している。県の幹線網であれば、スター型を採るのであれば、通信事業者の信頼性が別の方法で確保されている回線を使う方法がある。一方、ダークファイバ借上げも含めた自設方式を採るならループ型でないと、信頼性を確保できない。

委員:  今日の資料は、基本的にはいい資料だと思う。しかし、いくつか問題がある。
 @まず、項目が多すぎるからアピール性が弱い。このままでは、県のやろうとしていることが県民から見えない。アクセスポイントがこれしかなくては、ユーザとしてはつなぐ気にならない。
 A財源については、某県のように、税金をとっていく形にしないといけない。地元企業から公平な立場でお金を取る仕組みが必要。
 B各都道府県の整備状況をみると、関東6県が非常に遅れている。関東6県IT戦略会議を開くチャンスではないか。
 Cラストワンマイルについて考えると、メタル回線では距離が長すぎて全県をカバーしきれない。アクセスポイントの数をもっと増やしてNTT局舎ごとに置くくらいのことをしないと足りない。アクセスポイントをもっと増やすべき。
 D家庭とつないでユーザを増やすためには、CATVとの提携を考えないといけない。また、東電系の電力線通信網との連携も考えるといい。
 Eコンテンツについて言えば、遅れている市町村にブロードバンドを持っていっても無駄である。その場合は、県が自らつなぐか、キヨスク端末を各市町村に強制的に配置していくしかない。市町村ネットワークに関しては、もっと「ねばならない方式」が必要である。
 F県内企業の事業所や茨城県産業会議のメンバー企業などに入ってもらうといい。その根回しが必要。
 Gメタル回線と光ファイバのどちらがいいかという問題がある。某国ではADSLが普及しているが、メタル回線では限界がある。やはりFTTHであって、光ファイバをきめ細かく整備して目玉にしていかないといけない。そうでないと某国と同じ状況になってしまう。ADSLが最終的な形態とは思わない。

委員:  全体的な議論として、基盤をつくると決めたのなら賛成であるが、私の関心は、収益モデルをどう作っていくかにある。日本は、これまで通信開放が遅れていたのが、黒船来航による開国と同様、急にオープンになってきている。県がどうしてもやらないといけない役割が減ってきているのはいいことである。今は民間の力を使う余地が飛躍的に増えてきている。委員の意見はそのとおりと思うが、県の役割としては、全体の企画・整備の部分が重要だと思う。基盤には、JR系・電力系・鉄道系など色々と考えられるのであって、もし県がやるのであれば、県道脇の溝に回線を引くことなどもできる。そういう基本的なコーディネートは民間ではやりにくい。県がやれば推進力がある。そして、基本コーディネート終了後は民間に任せればいい。民間の力が伸びていることによって、収支が成立する条件が整ってきている。茨城県は遅れているという話だが、遅れたのは有利かもしれない。今は技術の進歩が激しく、遅れれば遅れるほどコストパフォーマンスがいい基盤を導入できる状況にある。収益モデルをねらっていく体制ができているといえる。

委員:  基盤整備をすると決めていくのは大賛成。公共部門もあるので、県がやらないと他ではやれない。しかし、今日の資料を全体的にみると、整備費の上限額を考えながら中身を考えている気がする。情報というものが、県で本当にどういう風に使われていくのかを考えていないような気がする。メタル回線か光ファイバか、という議論についても、情報をどう基盤に載せていくのかを考えれば自然と決まってくる。基盤整備を時間の流れの中で捉えていくときに、どの程度のコンテンツが将来的に流れていくのかを考えないといけない。他県の例を見ても、せっかくの光ファイバがあまり利用されず、過剰投資になっているところもある。時間軸を取り入れて、その辺の話を盛り込んでいくともっと分かりやすくなると思う。委員の言うとおり、県民に対し、将来はこういうコンテンツが流れてこういう風になりますよ、とPRする手立てを考えていかないといけない。

委員:  基本的に、こういうインフラ整備は必要だと思うし賛成。しかし、あの県にあるから茨城県も、という公共事業的発想ではなくて、遅れたことのメリットを活かしていかなくてはいけない。先ほどの話にもあったように、基盤を早く整備しても使われないケースが多い。先進県が今、何に苦労しているか学んでおくことが大事である。お金の面とか、利用者が増えないなどの悩みがあると思う。時間軸を考えると、昔はできなかったことでも今なら整備できることもある。その辺を踏まえていくのもいいだろう。また、県民にとって何が嬉しくなるのかを県民に伝えることが必要である。例えば、2.4Gの基盤であれば、ストリーミングの動画を大量に発信できる、公共サービスでもこんな新しいものが提供できる、など。いかなるインフラを作るかについて知恵を絞っていくのだろうが、その半分でも、これでどういうサービスを提供するかを考えていくと、インフラをより活かせるのではないだろうか。例えば、県職員が2,3日合宿して100のアイデアを出してみるとか。

委員:  私も皆さんと同意見である。先日、総務省の会議に行ったら、いかにも、茨城県が関東で1番遅れているかのような意見が多かった。しかし、基盤整備が早い県と茨城県とで生活レベルに差があるかといえば、そんなことはないのであって、慌てなくても、慎重に考えていけばいい。なるべく県が自前でやらないで民間に任せるのがいい。多少お金がかかっても将来的にはその方がいいと思う。また、先ほどからの話にも出ているように、県民にPRしていくことも大事である。

委員:  まず、整備主体については、県に全体的なコーディネーションをやってもらうことが重要。その後は、今は規制緩和も進んでいることだし、できるだけ民間の力を引き出して収益性を考えながらやっていくべき。県民に見えるようにやっていくことも重要。サービス・コンテンツを充実させることも重要。

事務局:  委員の皆様方からの専門的な見地の御意見は、もっともである。これまでの議論を振り返ると、@整備の具体的なやり方に関わる部分についての意見が多かったように思う。この会議の場でどこまで詰めていただけるかもあるが、最終報告までに方向性は出していきたいと思う。
 Aダークファイバの借上げについては、1年前にはできなかったことである。民間の動向をみながらやり方を考えていきたい。
 B県民へのアピールが重要という意見についてはもっともである。サービスメニューの検討など、次回以降、最終報告までにまとめていきたい。

議長:  今日の議論では、回線の整備に関する部分、民間にゆだねる部分、県民に伝える部分についての意見が出された。こうしたポイントを踏まえながら、事務局で整理していただきたい。それでは次に、時間の関係もあるので、2つ目の議題である人材育成・学校教育の情報化についての議論に移りたいと思う。前回と同じ資料が提示されているが、事務局から何か全体的な話があればお願いしたい。

事務局:  前回の会議では、ハード整備とともに、コンテンツを引き出してきて教育の場で使うことが大事であると指摘された。通信回線については、小中学校は一般的なものだけである。県立高校については、今年度中に全て1.5Mでインターネットに接続する予定である。来年度は、特殊学校でも1.5Mで接続する予定である。通信回線が整備されれば、複雑な事業も可能になるのではないかと思う。また、国のモデル事業で、潮来市を対象にテレビ会議を使った授業をやっている。昨年度はつくば国際会議場で、つくば市と上海市の学校を結んだテレビ国際会議の実験をやったりした。

委員:  我が社での話を紹介したい。今年度秋から、全社員にTOEIC受験を義務付けることになり、650点以上取れないと課長に昇格させないこととなった。昇格がかかるとなると、いい教材を頑張って探すようになるもので、英語を含めた語学系については、インターネット上やCD−ROMなどで本当にいいものが出てきていることが分かった。最近は、学校での英語教師のレベルが落ちていることを感じるので、よいデジタルコンテンツを実際に使ってみると、相当のレベルアップが図れると思う。ただ問題は、コンテンツを評価するものがないことである。

委員:  今の指摘は重要であって、全世界に教材を求めるということを、小中学校のうちから是非やってもらいたい。インターネットには有害情報もあるが、全世界にどのような情報があるのかについて、これまではあまり教育されてきていない。例えば、世界にどんな言語があるのかについて、インターネットを利用すれば、実感として理解することができる。もう1つ、教員の技術の在り方も重要である。今の時代、先生がパソコンを使うこと自体は多分大丈夫であるが、万が一トラブルが発生した場合、どうしていいか分からなくなってしまう。そうなると授業が止まってしまう可能性があり、そうならないようフォローアップするシステムが必要。先生が戸惑ってしまうと子どもも不安になってしまう。

議長:  教育は知的産業の最たるものであり、これからは図書館、美術館、博物館などの電子化やネットワーク化がクローズアップされてくると思う。知のネットワークとしての図書館や各地の資料館を学校でいかに活用できるか、その辺について県で何か構想があればお聞かせ願いたい。

事務局:  図書館ネットワークについては、構想としてはある。美術館・博物館のネットワークについてはまだ特に計画はない。皆さんの御意見を聞きながら考えていきたい。

議長:  いずれその辺についても議論していきたいので、タイミングを見て素案をまとめてもらえればと思う。

委員:  ネットワークやパソコンの整備は割と早くできるだろうが、それをどう使うかについては、県で指針等を作るのか、それとも現場に任せるのか?実は大学でも同じ問題があり、ここのところは相当考えておかないと、インターネットで絵をみるだけで終わってしまう。

事務局:  学校に高速回線を整備していくので、サーバの中に、県が開発したコンテンツなどを入れていこうと思っている。また、県教育研修センターというところがあり、学校とつないでいく予定だが、そこのサーバにもコンテンツを入れていきたい。地域LANの考えについても国から出てきている。通信インフラをどう使っていくかについては、小中高校の教科の中で今後、情報関係の科目が指導要領として入ってくるわけで、そうなると、指導マニュアルが国から示されることになる。

委員:  先ほど、教材に関する話が出たが、私は、とにかく、子どもが自由にインターネットを使える場を提供してほしいと思う。インターネットは新鮮な情報の詰まっている図書館のようなものである。サーバにコンテンツを詰め込むのも重要だが、それよりもインターネットに自由にアクセスさせる方が有効である。この点に関しては、子どもは大人よりよほどうまく使いこなせるから、特に指導はいらない。ただ、インターネットには悪い情報もたくさんあるので、アクセスする場所をオープンにして、相互に注意や監視ができるようにしないといけない。また、システムがダウンしたときの対応についてだが、先生にそこまでやらせるのは大変である。すぐ近くにプロのサポート体制を持っておく必要があるだろう。いずれにしても、子どもがいつでもインターネットにアクセスできるような環境を提供することが大事である。

委員:  私は逆に、インターネットは先生の最低品質を保証すると思っている。先生のレベルにはばらつきがあるが、インターネットを使うことで、子どもはどんな先生からでも、とりあえず最低レベルの教育を受けることができるようになる。むしろ、先生が無理に何でもかんでも勉強しなくてもいい、となるかもしれない。また、思いつきだが、例えば茨城大学などでデジタルコンテンツを包括して、全国に向けて発信していってもいいかもしれない。デジタルコンテンツセンターのようなものを考えるとか。システムダウンの際の対応について議論があったが、私は、紙の教科書はなくならないし、なくしてはいけないと思う。家で復習するにしても、家にパソコンがある子とない子で差が出るようなことがあってはならない。システムが止まったら、紙の教科書でやればいい。ポイントはそういうことではなく、デジタル教材の提供や教育の品質保証である。

委員:  一番大事なのは、情報の洪水の中から、子どもがどう情報と付き合っていくかのスタイルを確立することである。インターネットを使えば、今までは接触できなかったような人とコミュニケートし、新たな発見を得ることができる。知識教育だけでなく、情報をどう使うかのコラボレーションのやり方を検討するのが大事である。

委員:  双方向的なITとしてのインターネットとしては、これでいい。ただもう1つ、ブロードキャスト能力の活用という観点を考えないといけない。ネットワークにつながった学校は、必ずブロードバンド放送局を設けるとか、ホームページを開設するとか。コンテンツを頑張って作る必要はないのであって、授業をそのまま流すだけでいい。親は子どもの受けている授業を見てみたいし、カメラがあることによって授業が活性化することになる。1秒間に6コマ程度流れれば画質としては十分であり、3コマ程度でも動きは分かる。授業を流すだけなら、すぐにでもできることである。

事務局:  授業のライブ中継については、国のモデル事業として三鷹市でやっている。ただ、映像を流す対象は、授業参観に出席できない保護者に限っているようである。今後、授業以外に運動会などの行事についても中継していくようだが、子どもの安全のためにも配信先は今のところ限定されている。ものによっては、こうした試みもやっていきたいと思う。

委員:  そういうことを、いつの段階でどうやるのか、と考えていくと、何Gの通信容量が必要なのかというところが見えてくる。そこのところを検討しておかないと、基盤整備はうまくいかない。仮に、全県民がブロードバンド放送を行ったらどうなるかということを考えていくと、インパクトのある基盤が整備できるだろう。

事務局: (小中高校のホームページ開設状況について説明)

議長:  IT技術者やコンテンツクリエイターの話題が出てきたことでもあり、また、ひたちなかテクノセンターでも色々やっているだろうから、商工労働関係で何かあればお願いしたい。

事務局:  中小企業は、ITに取り組みたくても技術者がいない、お金もかかる、などの問題を抱えている。県では昨年度、経営者に対するIT研修などを実施した。IT先進事例の発表や相談会の開催なども行っており、今年度もやっていく予定。今後は、企業にとってITをどう活かしていけるかといったリーダー研修を実施していく。融資制度も持っている。これからの課題としては、1歩進んだ技術をどう育成していくか、その辺のシステムをどう作っていくかだと思っている。

議長: それでは、まだ時間に余裕があるようなので、全般的に何か意見があればお願いしたい。

委員: 情報セキュリティの問題も重要である。これは特に公共の分野で重要であり、全てを民間任せというわけにはいかない。国でその辺のことをどう考えているのかをきっちり調べて、茨城県ではどうしていくかを検討していかないといけない。

事務局: セキュリティについては、IT戦略会議の6点目の議題に挙がっており、これから準備を進めていきたい。

議長:人材育成・学校教育の情報化については、今日は特にまとめることはしなかったが、色々な意見が出されたので、県の資料をさらに肉付けしていってもらいたい。今日の議論を事務局で整理して、次回以降反映させてもらいたい。なお、次回の会合は、既にお知らせしているとおり、8月2日14:00〜の予定なのでよろしくお願いしたい。